生長を停止したサボテンたち
温室のサボテンは、今日も百花繚乱のごとく花を咲かせています。しかし、
全てのサボテンが順調に生育しいるかというと、そうではありません。機嫌
を損ねて新刺を出さなくなったり、花を咲かせなくなったりするのもあります。
そういうサボテンをご紹介します。
このサボテンは大龍冠(エキノカクタス属・Echinocactus polycephalus)
の実生小苗です。
2年前から生長を停止しています。昨春と今春、生長期を迎えても新刺を出
さなくなりました。
春の移植時に根の健康状態を見ると、赤ぐされ病も無く、良好です。球体も
年々、萎縮するでもなく、ある程度膨らんだ状態を保っています。それでいて
生長を停止したままです。
<こちらは龍女冠の実生小苗・一部が生長停止状態です>
何らかのストレスが掛かっていると思われます。定かではありませんが、生
長停止の要因として水ストレスが考えられます。
以前に、信州のK氏から「生長初期の水不足で、生長障害を起こすことがあ
ります」と聞いたのを思い出します。その意味するところは、次のようなもの
です。
<サボテンが生長期に入ったのに水の補給が出来ないと、体内の水分の
損失を防ぐために気孔を閉じる。それは、同時に炭酸ガスが取り入れら
れないことであり、光合成ができず生長停止の状態になります。>
これは道理としては理解できるのですが、現実問題として、ただ、ある年の
水やりのタイミングがズレタだけで、直ちに防御態勢に入り、生長停止のス
イッチを入れるのだろうか。事例も、観察も乏しく、なんとも判断しかねるとこ
ろです。ただ、水やりのタイミングが大事なことは言うまでもありません。
サボテンは耐干性の強い沙漠植物なので、一度、水ストレスによる生長停
止状態に入ったら、生長再開には日数を要するものと思われます。
<これは英丸・沢山できた仔の方に刺が出なくなりました>
生長停止の要因には、水ストレスだけでなく、複合的な要因が働いているこ
とも考えられます。もう一つは高温多湿ストレスです。
サボテンの自生地である沙漠の気候は、日中は高温(乾燥)、夜間は冷え込
みます。朝方の沙漠には結露が見られます。そういう環境に生きるサボテン
は、日中は気孔を閉じて水分の蒸散を防止しています。逆に、気温の低下
する夜間に気孔を開き炭酸ガスを取り込んでいます。
夜に光合成の準備をしている訳です。
サボテンは、所謂、CAM植物と呼ばれる炭酸同化をいとなんでいます。
(注)Crassulacean Acid Metabolism 有機酸代謝
<これは大龍冠の実生小苗・新刺が出て順調です>
温室で見る大龍冠の一番の生長期は、春やや遅く(同属の龍女冠より遅い)
から梅雨明け(この頃に開花する)頃までです。日本の梅雨時の蒸し暑い時
節に生長期間が一部重なっています。この時節の夜を多少なりとも涼しく過ご
させることが高温多湿ストレスを軽減させることになりそうです。
サボテンは正直なので、栽培主の不自然な栽培が続くと、ストレスで体調を
崩したり死滅したりします。生長停止!という無言のシグナル。サボテンの
生理を把握できていませんが、様子を見ながら生長再開を根気よく待って
みようと思います。
<生長停止を解除。赤い刺を出し始めた龍女冠>
追記 小型サボテンが花を咲かせました
マミラリア・ドドソニー
マミラリア・テレサエ
マミラリア・ルエッチー
スルコレブチア
ご覧いただきありがとうございました。